コロナウイルスと死亡原因

どのくらいの人間が実際にコロナウイルスで死んでいるのか。多くの人々はむしろコロナウイルスを抱えながらも、先行疾患で亡くなっているのではないか。この問題を詳しく見てゆくとはっきりするのは、なぜ信頼するに足る患者数を把握するのが難しいのかということである。(April 7. Spiegel)

ハンブルクでどのくらいの人間がコロナウイルスでなくなったのかを現時点で調べようとすると、二つの公的機関から異なった情報をもらうことになる。ロベルトコッホ研究所(RKI)は連邦政府の機関として、コロナウイルス(Sars-CoV-2)感染が確認された人のすべての死亡例の数字を挙げる。ハンブルクの保健局はそれに対して、法医学的に確認された死亡例だけを挙げる。「これによって、コロナウイルスを保持しているだけではなく、実際にコロナウイルス感染で死んだのかどうか、医学的に違った形で確認される事になります」、とハンブルク当局は述べている。RKIは毎日の状況報告では、コロナ感染に関連した死亡例として報告している。

これにより我々は死者の数を過大視しているのだろうか。新型のコロナウイルスの危険性をより正確に評価するためにより正確な定義が必要なのだろうか。

ミュンスター大学の疫学者である André Karch は、RHIの方法は、緊急事態においては適切であるとして、現状においては、こうした簡単で確立された方法が必要と考えている。Karchは新型コロナウイルスで死ぬのか、それを保持しながらも他の先行疾患で死ぬのかと言う問題を重要だとしながらも、現時点においては解決が難しいと見ている。というのも、個々の症例においては死亡原因はただでさえ、はっきりと分類することは難しいからだ。科学的な視点からすれば、同じようにとても重要なのは、この病気によって、本来あるべきだった余命がどれほど失われたのかであるという。Karchによれば、これを調べるには大変なことであり、将来の課題だということである。

4月5日に公にされた新型コロナウイルスによる病気(Covid-19)とどう関わるかについての論文の中で、ある研究者集団が、なぜ我々はこれまでの死亡者数に基づいて、新型コロナウイルスの危険性を過大評価しうるのかの例を述べている。先行疾患のある中年の患者が脳卒中を患い、病院に来て、無症状の新型コロナウイルス保菌者だと診断され、その後亡くなれば、新型コロナウイルスの死亡例として記録される。

Karchはそれを認めながらも、もしその患者が新型コロナウイルスに感染していなかったら、脳卒中を患っていなかったかもしれない、という可能性もあることも考慮する必要があるという。さらにその患者が新型コロナウィルスに感染をしていなければ、脳卒中で死ななかったかもしれないという。

ギーセン大学の感染症専門家のJohn Ziebuhr は、彼の視点からすれば、臨床検査的に確認された新型コロナウイルス感染と時期的に関連している個々の死亡例を新型コロナ感染死として把握し、このウイルスからどのような危険が生じるのか判断するために報告することは、絶対に正しいことだと述べている。

これまで公表されたデータによれば、新型コロナウイルスによる感染はとりわけ中年の人々、また先行疾患のある人にとって危険である。イタリアの保健当局はこの間亡くなった1102人の先行疾患についての比較的詳しいデータを公表した。平均年齢は78歳であった。これによるとおよそ4分の3が高血圧、およそ28パーセントが冠動脈の病気、つまり冠動脈狭窄であった。また約32パーセントが糖尿病を患っていた。亡くなった人は平均で、2,7の先行疾患を持っていた。かろうじて3パーセントだけが先行疾患がなかった。イタリアでも死亡した場合に新型コロナウイルスが確認されれば、新型コロナウイルスによる死亡例として数えられる。

逆に言えば、この人たちは新型コロナウイルスでなく、先行疾患で死んだ、ということではない。高血圧、糖尿病、冠動脈狭窄症があっても何年も何十年も問題なく生きることもできるのだ。

Ziebuhr は、 主となるいくつかの持病のそれぞれの死亡原因の割合とウイルス感染の直接的な因果関係を区別することは、具体的な死亡例、とりわけ深刻な先行疾患を煩っている人の場合は、しばしば容易ではないと述べている。「しかしながらそうした場合でもほとんどの場合、感染がなくても、まさにこの時点でとは言わないまでも、恐らく2,3ヶ月後、あるいは何年か後に亡くなると言う意見はあたっています」。

イギリスの医療統計専門家のDavid Spiegelhalter の予測によれは、通常の条件下での新型コロナウイルスの感染は、本来であれば次の年に亡くなるかもしれなかったようなリスクを、次の1、2週間で亡くなるようなリスクへと変えてしまった。勿論それぞれのリスクは人によって異なるし、本質的に年齢や先行疾患に関係している。

RKIの所長のLothar Wielerは先週、自分は新型コロナウイルスによる死亡例は過小評価されているという前提にたっていると述べている。「その原因はすべての人間の検査をする事ができないからです。その人が感染で死んで、検死をしてもウイルスを検証することはもはやできないでしょう。」

ドイツ疫病学会の疫病方法作業グループのスポークスマンであるCarsten Oliver Schmidtも、イタリアやスペインの例を見ながら、新型コロナウイルスの死亡者数は知られているよりも遙かに多くて、少ないということはないと推測している。と言うのもイタリアでもスペインでも個々の感染を確認する十分な検査の余裕がなかったからである。

更にこのウイルスはそもそも感染していない人間の命を奪うこともある。例えば健康を維持する社会システムの負担があまりに過重になり、医療を必要とする緊急時に適切な救護ができなくなってしまう場合である。目下ドイツの医師たちは緊急入院が避けられる現状について報告していて、(コロナウイルス感染を心配して)、心筋梗塞や脳卒中の患者が明らかにまれにしか医療機関に来なくなっているのを心配している。こうしたことは最悪の場合死に至ることもある。多くの人にとって感染していなくとも、このウイルスが死をもたらすかもしれないのである。