プーチンによる政敵の排除
2020年9月3日
プーチン体制の保証人たちの資金源を絶たねばならない
EUはアレクセイ・ナワリヌイの毒殺未遂に関する新しい知見が表明された後の対応について議論している。緑の党とFDPは連邦政府が直ちにプーチンに近いロシアの新興財閥のトップを処罰すべきだと要求している。
Von Matthias Gebauer und Christoph Schult 03.09.2020, 00.14 Uhr Der Spiegel 2020.09.03
緑の党はロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイに関する新しい知見が明らかになった後に、連邦政府の厳しい対応を要求している。
シュピーゲルの得た情報によれば、緑の党は非公開の会議で、水曜日の午後に連邦政府がEUの共通の対応とは別に、ドイツとしてロシアの大統領ウラジミールプーチンの側近に対する対策を打ち出すべきであると決議した。
緑の党の外交スポークスマンであるOmit Nouripour はクレムリンに近い新興財閥の資本や不動産の凍結のような具体的な罰則対策を要求している。更にシュピーゲルに対して、ロシアにはたくさんの新興財閥がありこれらがドイツで投資し、クレムリンと非常に強く結びついているとしている。そして「直ちにこうしたプーチン体制の保証人達から財源を絶たねばならない」と要求している。
Omit Nouripourはまた、ソビエト連邦崩壊後に部分的に何十億もの資産を形成したロシアの企業家たちに対して罰則の方策を取れば、プーチン大統領自身にもメッセージを伝えることができるだろうと強調し、「こうした新興財閥がドイツで勝手に仕事をし、それによってクレムリンの世界が生き残るのを保証している、などということがあってはならない」、と述べている。
国防軍の研究所の結果が注目されている
FDPにおいてもロシアの新興財閥は標的となっている。「ナワルヌイの事件で、EUにおいても直ぐに個人の制裁を考えねばならない事が必要になっている、とFDPの外交スポークスマン、Bijan Djir-Sarai は述べた。「それには恐らく幾つかの新興財閥が該当することになろう」。
厳しい要求が出てきたのは、ナワルヌイの事件の水曜日の新しい知見が首都中にショックをもたらしたということの証である。すでに火曜日には、先週の半ばからシャリテ病院からの依頼で毒を盛られた反対派の政治家であるナワルヌイの血液、皮膚、尿を調べていた、厳重に護られた国防軍研究所から最初の結果がベルリンに送られた。すぐさま連邦首相府はすべての関係する大臣を招集した。前もって情報を漏らさないようにすべての人に箝口令が敷かれた。
国防軍研究所の結果は事実、気がかりなものであった。水曜日の午後、国防次官であるGerd Hoofe は選ばれた国会議員たちに、ナワルヌイのすべての検体の中に、はっきりと軍事用の神経毒ノビチョックが確認されたと報告した。事情に通じているこれらの政治家たちはこれが何を意味しているか直ぐに理解した。2018年の年始めにかつてのロシアKGBの職員であるSergej Skripal がイギリスで襲われ、ほとんど殺されかけた。その時事件の指令はモスクワから来たといわれていた。
まだ多くの疑問が未解決
連邦政府にとっては、ノビチョックの検出だけでも、ロシアの政府当局がナワルヌイの暗殺をシベリアでの選挙運動旅行中に自ら仕組んだか、あるいは少なくとも見て見ぬ振りをしたかの明確な間接証拠となる。いずれにしろ国会議員に対する内々の説明会で、政府はこのような毒物は軍隊の外部で製造することも利用することもできないということを確信していたようであった。
同様にまた多くの疑問が解明されないままである。国防軍の専門家たちは、どのようにナワルヌイが毒を盛られたのかこれまで承知していない。恐らく、国会議員へのレクチャーで言われたように、飲み物からの毒の経口摂取であろう。しかしそのほかにも別の可能性がある。それによれば、男か女かの犯人がナワルヌイに一種のスプレーで毒を吹き掛けたというものである。ドアノブに毒を塗る事も技術的には可能だと夕方に専門家たちは述べた。
連邦政府にとってナワルヌイの事件は政治的な悪夢である。既に今日でもロシアとの関係は凍り付いている状態である。ベルリンのティーアガルテンでのチェコの体制批判者殺害があり、捜査員はその依頼者がクレムリンにいると考えているが、その事件や連邦議会のハッカー攻撃の後、ベルリンの政府はモスクワに強い警告を送った。しかしながら制裁の強化にはまだ二の足を踏んでいる。
ロート:ドイツは犯行の証人である。対策を出さねばならない。
毒を盛られた反体制派の指導者をシャリテ病院に受け入れた現在、政府もこれからどうすべきか誰も詳しいことを知らない。外務政務次官の Michael Roth は連邦政府の外務専門の政治家との内々の電話会議で、今回ドイツはティーアガルテンでの殺害事件のように、政治的暗殺の現場になったわけではない。しかしナワルヌイがまさにここにいるという事実によって、事件の証人でもあり、何もしないで傍観することはできないだろうと述べた。
メルケル首相により連邦大統領を早々に任命した政府内の高官の話し合いにも関わらず、明確な方針は見えないままである。メルケル首相は水曜日の夕方に、ドイツだけではなく、全世界がモスクワからの返答を待っていると述べた。しかしながらメルケル首相ほど、ロシア政府が過去の同じようなスキャンダルについても何の対応もしてこなかったことをよく知っている人物はいない。
ロシア政府と密接な関係を持つ小規模の国々
CDU・CSU同盟の外交スポークスマンであるJürgen Hardt はそれには単純な理由しかないと考えている。彼は、「ロシア政府はとんでもない疑惑でもそれを解決することに全く価値をおいていないのです。それはロシアの抑圧体制の一部であり、反体制派に彼らに何が起こりうるのか知らせるためなのです。ロシアの大統領が自分の敵とどう向き合うのかの我々の最悪の危惧は始まったのです」と述べている。
Hardt はEU全体で議決された返答を要求し、「その返答は、Skripal暗殺やティーアガルテン殺人の後にあった対策を凌ぐものでなければならない」と述べている。しかしながらEUが共通の制裁で一致するかどうかは分からない。幾つかの比較的小規模なEU加盟国はロシアと極めて緊密な関係を保っている。こうした国々がEUの大国に責任を転嫁することもあり得る。